歳をとると脳が衰えるばかりでなく、筋力や体力も衰えてきます。これに伴い、お年よりは骨折などの怪我をしやすくなります。当然のことながら、治療とともにリハビリが必要になってきます。

リハビリは理学療法士や作業療法士の指示に従って、日常生活に必要な動作ができるように体を動かす訓練をするわけですが、それ以外にも、様々な薬を飲んだり、注射をされたりと、体力の弱ったお年寄りには大変なストレスがかかります。

身体機能回復に必要とはいえ、もっとお年寄りの負担を軽くする方法はないものか?それよりも体の機能が衰える前に何か対策はたてられないか?ということで試験的に導入されたのが『ワニワニパニック』でした。モグラたたきのようなゲームで、ゲームセンターでよく見かけます。

リハビリに来るお年寄りにこれで遊んでもらい、二ヶ月ごとに身体能力を計測しました。ただ、最初は中々結果がついてこず、関係者も不安をおぼえたようです。もうダメか…。という雰囲気が漂いはじめましたが、8ヶ月目にようやく結果が出たのです。この結果をもとに、リハビリテーションとエンターテイメントをあわせた『リハビリテイメント』を目的としたゲームが作られました。

この『リハビリテイメント』を使用した検証結果を国際学会で発表したところ、会場中から大きな拍手がわきおこったそうです。当時のリハビリは苦痛をガマンしながらはを食いしばってやるしかないものでした。リハビリを受ける側には苦痛が伴い、指導する側の療法士も気が重かったはずです。しかし、『リハビリテイメント』のコンセプトは、それまでの常識を根本から覆しました。

それが、ゲームを導入することによって明るく楽しく、お年寄りが自主的に楽しみながらリハビリすることが可能になったのです。療法士の精神的ふたんもかなり軽減されます。

その後、様々なゲームが開発され、ワニワニパニックのほかに、太鼓の達人をリハビリ用に改良したものや、スピードホッケー、パチスロや、プリクラなども導入されるようになりました。リハビリですから全部無料です。

このゲームを応用したリハビリは海外にも知られることとなり、オランダの研究機関から共同研究の申込みも受けたそうです。オランダのお年寄りにこれらのゲームで遊んでもらったところ、一人残らず「面白い!」という評価をもらったそうです。また、オランダの研究者たちを日本のゲームセンターに案内したところ、(オランダにはゲームセンターがない)みんな大はしゃぎでゲームに興じたそうです。

ちなみに、オランダに送ったのはワニワニパニックのほかに、ドキドキヘビ退治というゲームで、お年寄りが座ったまま、次々に出てくる蛇を踏んでいくもので、お年寄りが絶対に転倒しないよう、安全に配慮した作りとなっています。

リハビリは、継続しなければ効果は出ません。しかし、苦痛を伴うリハビリはよほどの意志力がなければ、続けていくのは困難です。ゲームは、苦痛を感じることなく楽しみながら長く続けられるリハビリを可能にしてくれるのです。