ゲームに関する疑問でも特に多いのが、暴力的シーンを含むゲームが人(特に子ども)に与える影響です。しかし、これに関しても、近年驚くような研究報告がありました。

暴力的ゲームは、人の道徳心やモラルに関する感受性を高める効果があるというものです。いったい、どういうことでしょうか。

この研究に使われたゲームは、実験の対象となった人に、テロリストとして国連平和維持軍と戦うという内容のものでした。このゲームをプレイした後の被験者は、ゲームの中とはいえ、人を撃ち殺したことに罪悪感を覚え、自分のやっていることは悪いことだと認識します。その反動で、道徳心が高まったものと考えられるのです。

他にも、アメリカでは戦地から帰還した兵士に戦闘ゲームをさせたところ、悪夢を見なくなりなったということです。また、アクション型ゲームを行う前と行う後で、多くの物の中から、特定の物を見つけ出す、というテストを行ったところ、ゲームを行った後では、正解率が格段によくなるという結果が出たそうです。このことから、アクションゲームには、脳の知覚力や注意力を高める効果がある可能性が高いということがわかったのです。

さらにアメリカでは、暴力的なゲームを販売している店のある地域では、販売をしていない地域よりも暴力事件が少ない傾向があるというデータもあるそうです。これは、ゲームがストレスのはけ口になり、精神的な安定を保つことができているという見方ができるのです。実際、この類のゲームをやっている少年に話を聞いたところ、実生活で暴力を使おうとは思わないし、暴力的な映画やTV番組には興味がないと答えたそうです。

実際、ここ数年ゲームの暴力的描写は年々リアルになってきているにもかかわらず、アメリカでは青少年の犯罪は減少傾向にあることがFBIの調査で明らかになっています。少年犯罪が起こるたびにゲームの影響が問題視される傾向がありますが、このようなデータを見ると、暴力的シーンがあるというだけで、短絡的に有害のレッテルを貼るのは少し考えてしまいます。

ただ、これらの結果が決定的な科学的証拠になったということでもありません。暴力的ゲームの子どもに与える影響を心配する声にもある程度の根拠はあるのです。暴力シーンを長く見続けていると、子どもは知らず知らずのうちに暴力を学びとってしまうというという報告もあります。

また、アメリカでは若者を軍隊に勧誘するために戦争ゲームを使うこともあります。このゲームにハマり、実際の戦闘でも冷静に戦う自身があると答えた若者がいるとか。戦闘ゲームではありませんが、日本でも以前、飛行機をハイジャックした青年が、飛行機操縦を体験できるゲームをやっているうちに、本物の飛行機でダッチロールなどをしてみたくなったという供述をしていました。

いまのところ、どちらもはっきりした科学的裏づけがとれていないのですが、『条件付きでそういったことも起こるかもしれない』というくらいで落ち着いているようです。