最近は、上手なコミュニケーションのとり方の指南書のような本をよく見かけます。実際に手に取った人もいるのではないでしょうか?しかし、実践するのは難しい…と思った人も多かったのではないでしょうか?

実はもっと簡単に他人と、しかもちょっと苦手なタイプとでも仲良くなれる手段があります。ゲームを利用するのです。…そんなバカな!と思いますか?でも、これも世界中で実証されつつあるのです。

任天堂のwiiスポーツのボーリングゲームを使った、シンガポールでの実験です。シンガポールでは、老人と若者の交流の場がほとんどなく、お互いを極力避けようとする傾向があり、社会問題となっているそうです。老人は社会から孤立しがちになり、若者は老人から様々な教訓を学ぶ機会がありません。これはシンガポールだけでなく、他の国でも同じことかもしれませんが。

シンガポールには、長年にわたってゲームが日常生活に与える影響を研究しているチームがあります。その研究者たちが老人と若者にペアを組んで、ボーリングゲームを毎週30分、六週間プレイしてもらったところ、相手に対する偏見がほとんどなくなり、どんな老人とでも、若者とでも友人になれる気がしてきたという回答を得ることができました。

ゲーム以外にも、会話したり、一緒に工作したりしても距離は縮まりましたが、お互いに対する嫌悪感を払拭するにはいたりませんでした。共同作業をした相手への理解はできても、老人全般、若者全般は嫌いなままだったのです。劇的な変化をもたらしたのは、ゲームだけでした。

また、国籍も宗教も違う男女が結婚しましたが、お互いの両親は互いへの嫌悪感からまったく交流を持とうとしませんでした。二人は少しでも距離を縮めようと、フェイスブックのゲーム『ファームビル』でブドウの栽培をはじめました。最初にはじめたのは奥さんで、両親と夫とやっていました。このゲームは、フェイスブックで知りあった『お隣さん』に手伝ってもらうことができるシステムになっています。

このゲームに夢中になった奥さんの母親が、収穫を早めるために知り合いに片っ端から声をかけていたのですが、ある日とうとう、夫の母親を巻き込んで作業するようになりました。このゲームを通じて協力して作業を行った結果、いまでは良好な関係が築けているということです。

SNSを通じて大勢の人とプレイできるゲームはソーシャルゲームと呼ばれます。ソーシャルゲームの強力な影響力は、どこからくるのでしょうか?研究の結果、以下の3つの作用があることがわかりました。

①共通の基盤をつくる
②親密感を高める
③相互依存を形成する

の3つです。

共通の基盤というのは、他者と経験を共有して共通の話題をつくることです。ソーシャルゲームはこのきっかけを簡単につくることができます。親密感を高めるというのは、ゲームがきっかけで、自分や自分のまわりのことを徐々に話すことができるようになり、ゲームを通じて頻繁に連絡をとりあうようになります。そして、交流が深まるにつれ、絆が深まり、相手が困っているとわかると、SNSを通じて手を差し伸べるようになるのです。

これがやがて、実生活でもお互いを助け合うようになってくるようになるのです。友人を作るのが苦手な人は、試してみる価値があるのではないでしょうか。