ゲームの役割は子どもの勉強ばかりでなく、医療の分野にも進出してきています。

難病の治療には、つらい治療を長期に渡って続けなければならないことがあります。とくに、自分がいまどんな状態なのか伝えるすべをあまり持たない子どもにとってはさらにつらい状況です。これを少しでも打開しようとして作られたゲームがあります。

ベンズゲーム(Ben’s Game)といい、主人公の男の子がスケボーにのり、ガン細胞を次々とやっつけていくゲームです。ガンを患っている子どもにこのゲームをやってもらうことで、自分自身のガンもやっつけていこうという勇気をもってもらう目的があります。すでに9カ国で翻訳され、導入されています。

このゲームは、スケボーに乗った主人公がガンに効き目のある薬を集め、がん細胞や副作用と戦う(ゲーム中では怪物の形をとっている)内容になっています。このゲームをプレイすることで、子どもは自分が飲んでいる薬にどんな効果があるのか学習するばかりでなく、自分の病についても学ぶことができるのです。

子どもに薬の効用をいろいろ書いた能書きやパンフレットを渡しても、理解してもらうのには時間がかかります。しかし、ゲームであれば子どもは興味を持って学んでくれ、病気とたたかう勇気をもつことができるのです。

べつの機関では8つの難病に関する知識をゲームで学べるようにしたゲームサイトを開設しました。質問に答えながら、治療法や痛みが出たときの対処方、大人に自分の状況をわかってもらうにはどうしたらいいか、などを学習できるようになっています。

ゲームは子どもの患者にだけ効果を発揮するものではありません。大人にも有効です。十度のやけどの痛みを緩和するのには、たいていモルヒネが使用されます。が、実はあまり有効な手段ではありません。これは長い間、医師たちを悩ませてきました。

それを解決してくれたのが、やはりゲームでした。このゲームはヘッドセットをつけて、コントローラーを操作し、3Dの氷の世界を探検するというゲーム。雪球をつくって、投げて遊んだりすることもできます。

一番痛みがひどくなる時期の患者にこのゲームをやってもらったところ、痛みを30%~50%軽減するという効果があることが判明したのです。これはモルヒネでは得ることのできない効果です。痛みは命を守るために必要なものではありますが、治療の邪魔になるのもたしかです。しかし、痛みを患者から遠ざければ治療はずっとやりやすくなります。
痛みは人の感じる感覚の一つですが、人の感覚は痛みのほかにもたくさんあります。人の感覚はつねに脳に自分の感覚を伝えようと必死です。逆をいえば、脳の注意を別の方向に向ければ痛みはそれほど感じなくてすむのです。その役割をはたしているのがゲームだったのです。

海外では患者に大してだけではなく、医療に従事する側の教育にもゲームを使用しています。アメリカでは、ゲームキューブを使用病院があるそうです。救急救命室で働く医師や看護師の訓練にゲームを使用する病院も出てきています。

日本では、ゲームを医療行為に利用するという考え方がまだ根付いていません。患者の苦痛を和らげ、医師も治療しやすくなるのなら、早く日本でも普及してほしいものですね。